全然仕事ができない、先輩や他の同期は要領良くテキパキ仕事をこなしてる。自分はどうしたらいいか分からなくて辛い。患者さんに元気になってもらいたい。もっと助けになりたい、気持ちはそうなのだけれど手技がない。
怒られてばかりの自分は看護の世界が向いてないのかもしれない。みんな忙しそうに動いてるから、分からないことがあっても質問できないまま時間が過ぎていって、どんどん不安になる。もう辞めたい。毎日こんな事してても意味がないように感じるし、自分なんていなくても大丈夫だろうし。
私は新人の時にこんな気持ちに何度もなっていました。辞めないで続けて来れたのは、運がよかっただけだと思っています。自分が後輩の指導をする立場になった時には、新人の頃、こんな気持ちになっていた事なんてすっかり忘れてしまって、当時の新人ちゃんには悪い事したなって思います。
だからというわけではないですが、
教育担当者や管理者が新人看護師さんの考えてることや、悩んでいること、できるとこならやる気を出させるコツ等も紹介していきます。
目次
そもそも、新人看護師さんが何で辞めるのか?
新人看護師が退職する理由の上位3位は常に以下の理由だそうです。
いかがでしょうか。どれかが当てはまると感じることはありますか?どのナースさん達も、だいたいこれらの感覚を味わいながらなんとか仕事を続けています。しかし、一方では、こういった感覚が耐えられず退職まで決意する新人看護師さんもいます。
なぜ、同じような事を感じながらも続けてこれた人、退職してしまった人がいるのでしょうか?何人かの友人(現在も現役でナースをしている)に聞いたら、理由はと聞かれたら、運が良かったとしか答えようがないと言われてしまいました。仕事を続けていく中で、やめたいなって思う気持ちは心の中でグツグツと溜まっています。それがある日、偶然何かしらの弾みで爆発してしまった人は退職してゆき、その弾みが運良くこなかった人は結果として続けてこられたのだと言うことなのでしょう。
3つの新人と卒業のための戦略
では本質を理解するにはどうすればよいのか?
・・・答えはとても簡単です。
それは、新人には3つの新人という側面があることを理解することです。この「3つの新人」と、「仕事を辞めたくなる上位3位」とは表裏一体の関係であります。従って「3つの新人」を理解するということは仕事を辞めたくなる上位3位の本質を理解するということに繋がるのです。
その本質を理解できたら明日からの仕事はとても楽になります。たいていのことでは気持ちが揺らぐこともなくなるでしょう。
早速3つの新人について具体的に説明していきますので是非、活用してみてください。
社会人として
まず、一つ目の新人は「社会人として生きること」です。先輩看護師の一番の大きなストレスになるのは、この社会人として新人であることです。当たり前の事ができないというのは、単純にバカにされているように感じるからです。社会人として新人だということが理解されていないため、多くの場合はバカにされているように感じイライラしてしまうのです。
たとえば、尊敬語とか謙譲語とかそういった類の話や、ホウレンソウとかそういったことです。これらはいつの間にか覚えていきますのでそれほど気にしなくても良いですが、
それだけではありません。社会人として生きることの中で特に重要なことはその考え方です。社会人というのは自分で自分の気持ちを律することが求められます。たとえば、誰かと自分を比較して優劣を付ける事は社会人にとっては全く意味を持たないことなのです。自分自身と向き合い、常に昨日の自分を超えていくことを目標に生活をするという意識を持つことが学生の思考(誰かと比較することで優劣をつける考え方)を卒業することになります。
具体的に誰かと比較してしまう癖や考え方を取り除き新人を卒業するには「目標設定」をして常に自分自身に意識をフォーカスする環境を構築することが大切になってきます。簡単な所でいえば、具体的な改善方法は日記を付ける、もしくは週間予定表を作るといった自分の行動を計画&振返りを行う週間を作ることによる自分と向き合う癖をつけることです。
しかし、ただ目標設定をすればいいという話でもありません。
つまり、目標設定をしてから、行動をした結果どうなったのか、さらにその結果から次の目標はどうするのか、といった一連のサイクルを繰り返し行うことで初めて意味を持つのです。いわゆるPDCA(Plan Do check Action)計画、行動、検証、再計画のサイクルを常に繰り返すことです。
まずは、3ヶ月がんばってみましょう。はじめは馴れない事なので、やっていることに意味を感じないかもしれませんが、3ヶ月無事やり終えた時にはPDCAサイクルを回していない時と回している時の自身の気持ちの安定感の違いにびっくりすると思います。
看護師として
ずっと夢見てきた看護師という仕事についたのでだから、多くの人が誰かのために役立ちたいと強い気持ちをもってケアの仕事に望んでいるはずです。そのため、気持ちが空回りしてしまい自分に無理を強いることまでしてしまう新人看護師さんがたくさんいます。
そんな毎日の中、理想と現実の間に気持ちが落ち込んでしまい、鬱病や精神的に参ってしまうケースが後を絶ちません。
看護師さんはケアをする仕事もあれば、ケアをするためにスムーズに物事が進むような人間関係や環境構築も必要です。それは患者さんに対してだけでなく、同僚や医師、事務方さん、患者さんの家族なども含めて関係するすべての人が対象といえます。
こんなにたくさんの人の調整役としても動かなきゃいけないなんて看護師の仕事だなんて、私は全く思わなかったです。看護師の仕事はケアをするだけではなく、調整役としても動かなきゃいけないし、事務作業もしなきゃいけない。一つ一つの仕事を切り取ってしまうと看護師ってこんな事やる必要ないんじゃないの?と感じてしまいますが、大きな視点に立つとすべてはケアの質を高めるための総合的な仕事と捉えることができます。
先輩看護師になっている頃にはこういった視点は当然のように持てているので、
その積み重ねがケアの現場をより良い環境にしていくことが新人看護師への大事な教育だと私は思うのです。
その職場の新人として
最後はその職場において新人であるという事です。言われてみれば当然ですが、意識しないと気づけない視点ではありませんか?
その職場では自分の技術を越えるようなケアを求められることが普通にあります。扱い方の知らない機器の準備、書類や段取りがわからないままでもどんどん仕事を進めなければなりません。
一方では自分ではまだまだ自身がないけど、先輩のやっていることを見よう見まねで試してみたり、もっと患者さんのためにしてあげたいという気持ちが強すぎて、まだまだできないことでもやってあげたくなってしまうこともありますよね。
でも現実は全く歯が立たなくて、失敗続きだったりします。先輩ナースには激怒され、患者さんからも怒られ、結局空回りで終わってしまう。自分は本当にこの仕事が向いてるのかわからなくなる。
それも真面目だからこそ感じる視点だし、そうゆう気持ちを持つことが職場の新人としては正しい感情なのだと思います。
失敗したらもちろんショックを受けるし、もう辞めたくなるのは当然。でも、これが職場の新人の正しい行動であり、考え方なのです。
さらには、こういった感情や行動は「慣れ」が進むに連れて自然と卒業することになります。だからこそ、意識的にいつまでの「初心を忘れずに」言い換えると職場の新人という気持ちを忘れずに積極的な姿勢を保つようにすることのほうが大事です。その為には、先輩看護師さんや管理者は新人看護師さんの失敗を褒めて承認してあげることが大事です。アレコレ患者さんのために興味を持ち失敗して経験しているという行為は一番の教育なのだと気づいてください。
新人看護師から先輩看護師へと立ち位置を変えるためには
さて、3つの新人、それぞれの対処方法が分かったところで、最後は先輩看護師に仲間入りするため、実践から手技など先輩から受け継ぐことで学ぶ機会を活かすコツを紹介します。
とは言え、ご存知の通り、看護の現場にゆっくり教育をしてもらえる時間的、人的余裕はあいません。後輩教育を担当している先輩は新人と同じく通常の仕事をこなしながら、教育をするため時間的な余裕がそもそもありません。さらには、教育技術についてもちゃんとした訓練を受けた人ではないため、雑な方法になってしまい、いわゆる見て盗む。自分から覚えるといった職人的な発想になってしまいます。
わざと教えないとか、意地悪をされているのではないかとか、放置されているのではないかとか考えてしまうことがたくさんあると思いますが、実際は既述したとおり環境がそれを許してくれないだけなのです。
こういった状況はたいてい、ちょっとした行動を積み上げることで改善されます。その結果、先輩看護師、もしくは管理者から積極的に技術をレクチャーしてくれる時間を作ってくれるようになるのです。言い換えれば、可愛がってもらえるのです。
新人看護師が3つの新人を卒業するための心得
その結果、新人を卒業するだけではなく先輩看護師になるための手助けをしてくれるのです。言い換えると皆に可愛がってもらえるのです。
とはいっても具体的にどうすれば可愛がってもらえるのかわかりませんよね。そこで、私の経験を許に先輩看護師さんが新人の頃に意識してきたことをまとめましたので是非意識して日頃の行動に取り入れてください。
ここでは場面に応じて意識すべきポイントを紹介していきます。新人看護師さんはそれを意識して一つ一つ行動してみてください、必ず変化が訪れます。
きっとすべては前向きに進んでいくことと思います。
当たり前だと思われて先輩看護師が教えない基本マナーを覚えよう
仕事でもプライベートでも、人と関係をもつ場合は必ずといってもいいほどマナーのスキルが大事になります。それは、相手の性格も素性も能力もわからないときに、どういった人なのか判断するために必要な判断材料とされるからです。挨拶や言葉遣い、笑顔など、マナーを意識しているということは、相手に好かれたいという気持ちの現れと考えられるからでもあります。
マナーを意識することは相手に好かれたいという気持ちを示すことになりますが、あまりにも丁寧すぎる敬語を乱用するのはマナーではなく不快な印象を持たれてしまいます。マナーの本質は丁寧にすることではなく、相手に好かれたいという心を示すことです。心野ない形式上のマナーは相手に伝わってしまうのです。
それでは具体的に意識しておきたいマナーを紹介していきます。まずは見た目です。
とはいっても、看護師としてきちんとした身だしなみを心がけてることです。あくまでも清潔なイメージを作ることを意識して整えてみましょう。
お化粧も自分を美しく見せるためではなく、看護のプロとして清潔な印象を作るためにしてください。あくまでも相手に好感を与えるための身だしなみです。具体的には、顔色が明るく見えるようにファンデを塗る頬や唇に色をちょっとさす程度で十分という感覚です。
アクセサリーについても衛生面でもあまり良くないですし、もし患者さんと接するときに落としたり引っかかったりなどしたらケガに繋がってしまう可能性があります。従ってマナーの観点から看護のプロが付けるのはあまりよろしくないといえます。
マナーといえば挨拶です。看護師がする挨拶というのは、一般的な意味と少し異なります。相手の存在に気づいてあげるという意味を持つのです、さらには毎日不安で過ごしている患者さんの存在に気づいてあげるという行為はケアの一つでもあります。
さて、最後に一番大事で難しいマナーを紹介します。わたしたちの言動はすべてココロとつながっています。怒っている時は怒った声、行動をしてしまいます。悲しい時は悲しい行動をとってしまいます。この様にココロと行動は常に一体になっています。看護のプロはココロと行動がつながっていることを意識して行動をすることが大事です。
それがケアの質にもつながってしまうからです。
一番大事先輩、上司との接し方をマスターする
仕事のすべてはホウレンソウ(報告・連絡・相談)で回っています。どんな仕事がどこまで終わっていて、どんなことがどこで起こって、何がどうかっているのかを先輩や管理者に共有することによって、自分の状況に興味をもってもらいましょう。それは結果として先輩や上司に可愛がってもらえることになります。仕事の相談やアドバイスもどんどんしてくれるようになります。
仕事の悩みって実はちゃんと相談しないと伝わらないです。だから、どんなことでも意識的に相談する癖をつけたいですね。
相談する前にどういった事を相談したいのか整理してから望むように心がけたいです。報告する時も同じです。はじめに結論→経過→最後に意見を述べるように意識的に話を進めましょう。
悪口だと思うからイライラするクレームの本当の扱い方
まず、誤解があるのが「謝罪」という行為についてです。こっちが悪くないのに、謝罪をしないといけない時があります。感情的には悪くないのにどうして謝らないといけないのかとイライラしてしまうことが多々あります。謝罪とは相手を不快にさせたり、不都合を発生させたりという状況に対して申し訳ないという気持ちを表現するためのものであり、悪い悪くないということは関係ないのです。
患者さんとの話は「ポイント」はどこにあるのかを理解して悪口としてではなく、意見として受け止めることが大切です。その姿勢は患者さんにも伝わり、今後の関係性が良くなっていくきっかけにもなりうるのです。やはりマナーと同じようにココロがこもっていれば人間関係に繋がっていくのですね。
苦情は苦情に至る前の兆候がいくつかでてきます。それらの芽を発見したら少しでも早く摘んでしまいましょう。
たとえ、苦情の芽を摘んだときに文句を言われるようなことがあっても、得られるものの方が圧倒的に大きいです。是非意識的に動いてみましょう。
誰からも信頼を勝ち取るために絶対行動したい6つの行動
1つ目:呼ばれたら必ず「はい」と言って、呼んだ人の方に顔を向ける
すぐに対応出来ない時でも「はい」とすぐに返事をして相手に視線を向けるようにしましょう。その後、こちら終わりましたらすぐに・・・と言い訳をするように心がけます。返事もせずに言い訳をすると、あまりいい印象をあたえません。
2つ目:時間の意識って社会人はとてもシビアに見ていることを知る
時間を守るということは約束を守るということでもあります。万が一遅れるようなことがあるなら、すぐに相手に連絡をすること。そういった意識を常にもつことが大事です。
3つ目:仕事中にプライベートなメールや私語をしない
公私混同には、職場で私的な感情を出すことも含まれています。好き嫌いで仕事の優先順位を決めたり、期限が悪いことを顔に出してしまったりしないように注意しましょう。
4つ目:勝手な思い込みなどで物事を判断しない
初めて実行することは絶対上司や先輩に確認するように意識します。たとえ上司や先輩がうるさがっているように見えても、最終的には確認をする人が可愛がられるのです。
5つ目:どんな些細な事でもどんどん報告すること
報告には仕事の進捗や完了を報告するものと、いつもと違う状況やミスやインシデントが発生した時にする報告です。どちらも結論から話すことを意識しましょう。
6つ目:一度注意されたことやミスは二度としない
なぜそうなったのかの原因を追求し、同じことを繰り返さないための具体策を考えます。2回チェックをする、読みあげるなど具体的に実行できる対策を考えましょう。
新人と言われる期間をいかに効果的に過ごせるか
新人看護師さんは看護師として新人であるだけではなく、「社会人」としても「職場」の一員としても新人であることを考えてみたら、
従って仕事ができない、人間関係が辛い、周りと比較して自分ができないと感じてしまうなど、どれも至極当然の話であり、そういった感覚をもっていることを教育担当者や管理者はちゃんと理解することも大事です。
これらの認識の上、3つの新人を卒業することを意識してゆっくり進んでいくことが、実は一番確実で早く一人前になれる方法なのではないかと思います。