人生の終末期に残された時をどのように過ごすか考えたことはありますか?
どのような時間を過ごすことが最良かその時が来たら誰もが考えることになるでしょう。この時期を充実させるためのケアがターミナルケアです。今回はこの“ターミナルケア”についてご紹介いたします。
目次
1.ターミナルケアって何?
まずはターミナルケアの概要についてご紹介します。
ターミナルケアを専門的に捉えた考え方では、死を目前にした人のQOL(クリエイティブ・オブ・ライフ)の向上を目指すケアと定義付けをしています。
日本では1980年代以降、緩和ケアの発展に合わせてターミナルケアが徐々に注目され、終末期にどうあるべきかという観点からターミナルケアを重要視する人が増えてきているようです。
具体的にターミナルケアですることは、「①身体的なケア②精神的なケア③社会的なケア」の3つのカテゴリーに分けることができます。
①身体的なケアについては専門家(看護師・介護師等)の力を必要としますが、②精神的なケアと③社会的なケアにおいては患者を取り巻く家族や友人などの協力が不可欠と言っても過言ではありません。
では早速3つのカテゴリー別にケアを紹介していきたいと思います。
是非参考にしてみてくださいね。
(1)身体的なケアをする
基本的な考え方は、薬などによって痛みを緩和させるケアのことを身体的なケアと位置付けています。ターミナルケアを開始する基準は様々ですが、衣食住が出来なくなったときにケアを開始するケースが多く、例えば食事、入浴、排泄などが自力で出来ない状態であれば、その補助をする必要がありますね。
より快適に過ごしていけるように食事や入浴、排泄の介助を行うことも身体的なケアとなります。病院でケアをする場合には専門家(看護師・介護士など)が担当しますが、在宅でのケアが必要な場合は、患者の家族が行うことが多いですね。
(2)精神的なケアをする
メンタル面のケアを行うことを精神的なケアを位置付けています。たとえば、病気で寝たきりであっても、普段と変わらない環境を作ってあげることで死に対する恐怖や不安を少しでも軽減し、楽しく過ごせる気持ちを維持することができるようになることなどがあげられますね。
例えば、写真を飾る、好きな音楽を流す、お花を飾るなど環境的にリラックスできるものを用意することも精神的なケアに繋がります。
死を近い将来迎えることを患者が知っているならば、その恐怖を完全に払拭することはできませんが、死を考えるよりも今をどう生きるのかと捉え方にも変化を生み出せるよう寄り添う心が大切です。
また、精神的なケアにおいては専門家だけではなく、患者に近しい人の理解がとても大切になります。
(3)社会的なケアをする
病気になると避けて通れないのが金銭面の負担。経済的な問題は患者の不安へも繋がります。例えば、「もうこんなに長く治療が続いていてお金がかかりすぎて家族に迷惑をかけている」とプレッシャーになることもあるでしょう。
また、仕事をバリバリこなし、役職者であれば「職場に迷惑をかけてばかり」と自己嫌悪になる人もいますね。心苦しく思う一方で、自分ではどうにもできない病状の悪化に葛藤の日々を過ごす人も多いようです。
この葛藤が続くと「私はいない方が良い」と思い始めてしまうこともあるのです。そうならないためにも、費用面の負担のことであれば専門家であるソーシャルワーカーに相談してみるのも良いでしょう。職場へ家族への負担に嫌悪感を抱いているのであれば、家族や周りの人達が「そんなことないよ」「大丈夫」と安心させてあげられるよう、日々コミュニケーションを取ることも大切です。
2.緩和ケアと何が違うの?
緩和ケアとターミナルケアの違いをご存知でしょうか?言葉が違うだけで同じ意味では?と思われる人も多いようです。
捉え方としては、“緩和ケアの一部にターミナルケアがある”と考えていただくと良いかと思います。緩和ケアは、癌などの患者の苦痛を緩和して治療も含め、QOL(クリエイティブ・オブ・ライフ)の改善を目指すものです。
3.ホスピスとターミナルケアの違いは何?
緩和ケアの一部がターミナルケアである旨は、前項でご紹介しましたね。では、ホスピスについてはどうでしょうか。ホスピスはケアのことを指しているのではありません。ホスピスは主に末期ガン患者に対して、緩和ケアやターミナルケアを行う施設ことを指しています。
在宅で緩和ケアやターミナルケアを行う場合も多くありますが、ホスピスで行う場合には専門医師・看護師の数が多いため、より1人1人に丁寧に目を配れる環境にある点で優れていると言われています。
ホスピスは一般病棟と違い、検査や治療の症状の改善を中心とせず、体の痛みなどの不快な症状を最大限に軽減するためのケアに特化していることが大きな特徴です。
4.ターミナルケアで心がけたいポイント
実際、ターミナルケアをするとなった時、不安が大きいのではないでしょうか?ターミナルケアはいわゆる看取りのケアです。とてもデリケートな状況にあるため、ケアをする側にも心構えやどう向き合ったら良いのか悩むことも多いでしょう。
そんな時のために、ターミナルケアを行う際に心がけたいポイントについてご紹介したいと思います。
自分の家族や大切な人にターミナルケアが必要となったときの参考にしていただけたら幸いです。
<ターミナルケアでの心がけ3か条>
(1)回復させるために必死になるケアではない
大切な人の死が迫っているという状況ならば何としても助けたいと思うのは当然のことです。しかしながら、冒頭から述べているとおり、ターミナルケア自体の意図としては病状を回復させることを目的としていません。
あくまで残された時間を充実させてあげることが目的です。そのため、苦痛から解放させてあげるために自分達ができることは何かという観点を持って接することが大切になります。
その中で病状が回復する場合や悪化する場合もあるでしょう。しかし、自然の流れにまかせ出来ることをすることを心にとめておきましょう。
(2)心の痛みに寄り添うこと
病気を抱え、間もなく死を迎えるという恐怖・不安を完全に理解することは不可能です。ただ、その恐怖や不安に寄り添うことは可能です。人は孤独を感じるとその恐怖や不安が大きくなるものです。
日々のたわいものない会話や手を握ってあげる、アロマを焚きながらマッサージをしてあげるということも良いでしょう。患者が安心感や穏やかな心でいられる時間を出来るだけ多く作ってあげることが大切です。
(3)最期の最期まで好きなものを好きなだけ楽しむこと
食事が摂れるうちは、“好きな物を好きなだけ楽しむこと”を大切にしましょう。
緩和ケアの最中ですと回復も目的としますから食事に制限がある場合もありますね。しかし、ターミナルケアをすることを決意したあとは出来るだけ“五感”を使って楽しむことを規準にしてみると良いでしょう。
病気に囚われて、五感を使う機会さえ奪われてしまう終末期ですが、もう一度“美味しい”と感じ、“楽しい”“嬉しい”といった感情を持たせてあげられるような工夫をしていくことをオススメします。
5.どこで最後を過ごす?ターミナルケアの場所
あなたなら、人生の最後をどこで過ごしたいですか?ターミナルケアを行う場所もとても重要になります。大きく分けると①自宅(在宅)、②病院)、③専門施設(ホスピス等)の3つから選択する人がほとんどではないでしょうか。
それぞれの場所での特徴を含めご紹介したいと思います。選択する際の参考にしてみてくださいね。
(1)自宅(在宅)でターミナルケアをする
最近増えてきているのが、自宅でのターミナルケアです。患者自身も思い出の詰まった場所で静かに楽しい時間を過ごしたいと思う人が増えてきているようです。
在宅でのターミナルケアの場合、お互いにとってかけがえのない時間を過ごすことが出来る点が最大のメリットです。しかしながら、24時間専門家のいる環境ではなくなるため、家族にかかる負担は否めません。
患者の希望を最大限叶えてあげたいと思う一方で、その看護や介護の大変さがあることも理解しておく必要があります。
(2)病院でターミナルケアをする
厚生労働省がホスピスとして認めている疾患は、「癌」と「エイズ」とされています。そのため、この両疾患の場合は、専門ホスピスでのターミナルケアを受けることが可能となります。その他、ホスピスでない場合も一般病棟で緩和ケアチームのもとケアを受けることも可能です。
自宅でのターミナルケアを選択しない場合には、この病院でのターミナルケアを受ける人が多いことも特徴です。一般的なケアの形ですので、環境は病院に居る時と変わりません。
専門家が常に診てくれる環境であるため、安心感はあるものの自宅で過ごすような家族水入らずということとは少し離れる印象になりますね。
(3)介護施設でターミナルケアをする
高齢者のターミナルケアとしてあるのが、介護施設でのターミナルケアです。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設では“看取り加算”というものが設けられており、ターミナルケアを前提として入居することが可能となっています。
介護施設でも看護師、介護士が常駐しているので、専門家が24時間体制で診てくれる点家族の精神的不安は軽減できる点がメリットですね。ただ、ターミナルケアの形は施設によって規定が異なるため、事前の確認が大切です。
例えば、病状が悪化し急変した場合には施設ではケアせず、救急搬送されるケースも多いようです。その場合、最終的に病院で最期を迎えることになる可能性もあります。
とてもデリケートな問題ではありますが、ターミナルケアをどこで行いたいか、本人の希望を聞き、家族で相談することがとても大切です。