1.救急救命士について具体的にイメージしてみよう
1.1.救急救命士の仕事
救急に配属されているナースさんだったら良く目にするのが、緊急搬送されてきた患者さん。そして隣りで処置をしている救急救命士さんですよね。
救急車に同乗して、病院まで緊急搬送されている間、医師に代わり(指示のもと)患者の命をつなげるために様々な処置を担当するのが、この救急救命士です。
しかし、救急車に乗車している隊員さんがみんな救急救命士というわけではありません。
心停止などによる危篤状態の傷病者を担当するのが救急救命士です。
消防庁では3人1組で動く救急隊員の中で1名はこの救急救命士を配置するよう指導をしています。
救急救命士は救急隊員と違い、命に関わる処置を対応することができます。
以下の表にはない「応急処置」と言われる処置は一般の隊員でも対応できるものがあります。
http://www.ebc.ac.jp/kyukyu/ccw/
ちなみに、法律的な言い回しだと以下のように定められています。
1.2.救急救命士はどこまで対応することができるのか
看護の現場で働いていると厳格に線引されているからわかると思いますが、人に対して医療的な処置を施す「医療行為」は医師のみにしか許されていません。
もちろん、救急隊員が処置を行うことはできませんでした。
しかし、そういった状況では救急時の救命率が低く、改善を要する状態にありました。
そこで、医師以外でも救命処置を行えるよう救急救命士という資格が作られました。
医療行為といってもあくまでも医師の具体的指示を必要とする特定行為と呼ばれるものに限ります。
看護だけではなく、直接患者さんの命に触れる行為にも興味があるナースにはピッタリのキャリアだと言えます。
1.3.ナースが救命救急士を目指すとどういったキャリアがあるのか?
従って看護師が救急救命士の資格を取得することで仕事の範囲が広がるかと言うとそうではないと言えます。
しかし、救急医療に特化したスキル、専門化としてのキャリア形成をするためにはとても役立つ資格ではあります。
たとえば、救急センターやドクターヘリなど命のやりとりをする場所で働いていたら、きっと専門家として大きな経験を得ることが出来ます。
また、資格取得と同時に消防へ転職した場合は医療業界の知識を持つ救急隊員として非常に重宝されるでしょう。
1.4.救急救命士を目指す人はどういったタイプが合っているのか?
救急救命の現場では命のやりとりが続きます。常に強いストレスがかかり、非常に緊張感がある場面で仕事をすることになります。
また、こういった状況下でも冷静な判断力が求められますし、同時に高度な医療知識やスキルがないと足手まといになってしまいます。
こういった場面にあった人には以下のような特徴があります。是非参考にしてみてください。
1.4.1.冷静な心、落ち着いた視点
高いストレスがかかった状態野中でも心を落ち着かせる意思を持ちながら、さらにはどういった処置が適切か見極める視点も求められます。
こういったスタンスは日々のスキルアップの中で自ずと身についてくるものだと言えます。
従って日々新しい知識を集めることや、仕事の中で常に何かを吸収していくという強い意思を持ち続けることができるかことがポイントです。
1.4.2.タフな体
救急業務は24時間体制で、勤務体系も24時間交代制が一般的です。
長時間の勤務であるだけでなく、1つ1つのケアは命を左右するレベルの現場になります。
高い集中力を長時間維持できる意思と体のタフさが求められます。
1.4.3.強く、つよい心
厳しい勤務時間や人の命を扱うストレスから離職してしまう人もいる職場ですから、純粋に「人の命を助けたい!」という強い気持ちが心の奥に燃えていないとまず続きません。
1.5.どういった場所でキャリアを積めるのか
救急救命士は現場から医療機関までの搬送途上で業務を行う資格であり、法律の定めるところの職務を行うには、病院前救護の現場で活躍する消防士になることが一番資格を活かせる仕事です。
その他、病院付のドクターヘリや救急救命の求人などもあります。
全体的には少ない印象ですが、自衛隊や海上保安庁、警察なども探せばでてきます。
看護師の視点からキャリア形成ということを考えるのであれば、やはり救急外来や手術など命のやり取りをする場所でケアの暁霧に当たるのが良いのではないかと考えます。
2.救命救急士になる!具体的なステップなどまとめ
さて、救急救命士を目指すにはどうすればいいのか具体的に学んでいきましょう。
救急救命士は国家資格です。従って目指すのは救急救命士国家試験に合格して、資格証を手に入れることになります。
国家試験といってもすぐに誰でも受験できるわけではありません。一定のルートに従って、受験資格を取得することが前提になります。
受験資格を得るための代表的な方法のひとつが、救急救命士法34条で定められた「救急救命士養成所」で、所定の単位を習得することですが、それ以外にも道はあります。
まずは、全体像を把握しながら自分の現状にあった方法で準備を進めるようにしましょう。
2.1.救急救命士になるステップ全体像
一般的には救急救命士を目指すルートは2つあります。
状況によってどちらがベストの道なのかは判断が変わってきますので、しっかり確認をして今の自分の状況にそった道を選ぶようにしましょう。
2.1.1.救急救命士養成校を卒業する
上の表では右側のルールを進むことになります。ステップ数は少ないので高校卒業してすぐに進む進路としては間違いなくこちらです。
しかし、学校の費用、時間の確保が難しい場合は実務経験を得る道を選ぶことになります。
こちらの道は「大学」の道か「専門学校」の道があります。人気なのは潰しが聞くと言われている大学ではないでしょうか。
入学難易度も大学といっても専門学校とそれほど大差ないレベルですから、卒業後の可能性の広さを考えるなら大学がおすすめです。
救急救命士国家試験を受験するためには、上記に挙げた救急救命士養成校で2年以上の研修を受けることが義務付けられています。
専門学校の場合は2年もしくは3年、大学の場合は4年間で卒業する流れとなっています。
このように学校の期間から考えても大学に在籍している方が幅広い知識を習得する時間が確保出来る面でも非常にメリットがあるのではないかと言えます。
2.1.2.実務経験を得るために消防署で働く
時間的な面でいうなら、養成校に通って受験資格を得る道が良いと考えられますが、仕事をすることで実務経験を得て受験資格を得るという道もあります。
具体的には、大学、短大、専門学校を卒業後、消防署の消防官採用試験を受けて合格し、消防署で消防隊員として勤務をする。
5年以上または2000時間以上救急業務を経験し、その後、6ヶ月以上養成校で救急業務に関する講習を受ける。
救急救命士国家試験を受験し合格する。非常に時間がかかる道ですが、消防署という公務員職での仕事になりますから、はじめは大変で潜り込んでしまったら安定する働き方です。
2.1.3.看護師の場合はどうやって受験資格を得るのか?
看護師の場合、平成3年8月15日の時点で看護師の資格を保有している場合は救急救命士の取得資格を有していますが、そうでない場合には救急救命士の養成所で2年以上の過程を修了しなければなりません。
ちなみに、なぜ平成3年8月15日で区切られるのかというと、現在の救急救命士法が施行されたのがこの日のため、それ以前に看護師の資格を取得したひとは資格を有していないと判断されるからです。
養成所はそういう人たちを救済する目的で用意されています。
2.2.資格のデータと資格に関する問合せ先など
申し込み | 例年1月5日から1月末までに受験に関する書類を提出 |
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日程 | 例年3月上旬頃 |
場所 | 北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県 |
受験料 | 30,300円 |
認定 | 例年3月末日に合格発表 |
その他の受験資格 | 文部科学大臣が指定した学校又は厚生労働大臣が指定した救急救命士養成所において、 2年以上救急救命士として必要な知識及び技能を修得したもの (試験予定の年までに修業又は卒業する見込みの者を含む。)など |
問い合わせ先 | 厚生労働省 |
TEL | 03-5253-1111(代表)(内線2550) |
FAX | 03-3503-8562 |
HP | http://www.mhlw.go.jp/ |
3.給与やキャリアとしての魅力は
救急救命士のキャリアとして魅力的な点は、公務員としての道が開けるという点が一番大きいです。
具体的に給与や待遇などの情報を整理してみました。自分のイメージする形と近いかしっかり確認しながら前に進むようにしましょう。
3.1.救急救命士の給与や年収など
救急救命士のほとんどは、消防署に所属する消防官として働いています。したがって、身分は「地方公務員」となります。
基本的に、他の公務員と同様に長く働けば働くだけ給料は上がっていくため、そうした点も救急救命士の職業としての人気が高い理由かもしれません。
救急救命士の仕事は、通常の給与に加えて現場への出動1件ごとに手当が付きます。地域や季節によっては月に数万円になるくらい出動が発生します。
もちろん、残業などについては一般の企業とは違いまず間違いなくしっかりでます。
基本給だけ見てしまうと正直魅力を感じないと思われるかもしれませんが、全体でみると一番魅力的な働き方なのかもしれません。
3.2.救急救命士のニーズはどうなのか
救急救命士に認められている「特定行為」は都度医師からの指示が必要であり、処置できる行為も制限されています。
しかし、近年は「特定行為を拡大することによって救える命もある」という主張が強まっており、検討が進んでいます。
実際、徐々に特定行為は拡大しているため、今後も救急救命士が担う責任は重くなっていくことが予想されます。
※消防白書より
救急車の出動件数は全国で年間500万件以上といわれており、年々その件数は増加の一途を辿っています。
急病だけでなく火事、交通事故などの際には、救急救命士は欠かせない存在です。
しかし、増加しつつある出動件数に対して救急救命士の数は不足しがちであり、都市部だけでなく地方でもその傾向は高いといわれています。
これから年々高齢化が進みますから、こういった状況はどんどんひどくなっていきます。社会では救急救命士という資格をさらに求めることになりそうです。