精神科の看護師に関心がある方、どのようなイメージをお持ちですか?
数十年前の精神科は閉鎖的でマイナスなイメージが多かったです。
しかし、現在は改善されつつあります。
自ら、精神科の看護師を希望し、キャリアアップを積む方もおられます。
とはいえ、関心はあるものの自分に勤まるのか不安が大きい方が大半ですよね。
そんな疑問や不安にお力添えすべく、
精神科の看護師の下記のようなポイントをご紹介します!
・精神科の看護師のメリットとデメリット
・精神科の仕事場あれこれ
・精神科の看護師の求人を見る際のポイント
1.そもそも、精神科ってどんなところなのか
1.1.精神科の特徴
精神科はその他の心療内科とはちがう畑のイメージをお持ちではありませんか?
確かにメンタル面の治療がメインとなり、医療行為は少なめです。
しかし、思っている以上にあなたの身近な存在です。
どうしてなのか?
精神科にかかる疾患といえば、うつ病、統合失調症、認知症などが良く知られています。
「うつ病」は、診断基準が変わることによって患者数に差が出るものの、年々増加傾向です。厚生労働省の調査によりますと、2008年には104.1万人となっています。
「統合失調症」はおよそ100人に1人がかかるといわれています。
会話ができなくなり、治らないといったイメージをお持ちの方も多いですが、早期に発見し、きちんと治療することで再発防止と治療を目指すことができます。発症は10代から30代の若者が多いとされています。
「認知症」は65歳以上の高齢者において8~10%程度とされています。今後、さらに高齢化が進むと2020年には325万人になるという予想もでています。
このように、普段あまり縁のない方でも何かのきっかけで治療を受けるかもしれない…とても身近な存在なのです。この他に、不安障害、摂食障害、アルコールや薬物依存症に悩み精神科を受診する人もいます。
さらに、精神科は長期入院の患者さんが多いです。
厚生労働省の調べによりますと、平成26年時点で平均在院日数は281日です。ほかの診療科に比べると大きな差があります。また、患者さんの年齢層も若者から高齢者まで幅広いです。
1.2.精神科の病院とは?
精神病の閉鎖的なマイナスイメージを改善するため、平成18年に「精神病院の用語の整理等のための関係法律の一部を改正する法律」が施行されました。
「精神病院」を改め、「精神科」にし、わたしたちがメンタル面に不安を感じた時に受診しやすい環境となったのです。
「精神科」は大学病院や総合病院の中にあります。精神病床のみの「精神科病院」もあります。クリニックにも精神科があります。
どのような種類の病院があるのか?それぞれご紹介します。
閉鎖病棟
閉鎖病棟は出入り口が施錠され、病棟から出入りすることはできません。
精神保健指定医の診断と知事の決定に基づく「緊急措置入院」、患者あるいは家族の同意がなくても精神保健指定医の診断に基づく「応急入院」、家族の同意があり精神保健指定医の診断に基づく「医療保護入院」といった患者の意思に関係なく入院するケースが主です。
中には、開放病棟にいたものの何らかの理由で閉鎖病棟に入院する患者さんもいます。
精神科救急入院科病棟(スーパー救急病棟)
閉鎖病棟の扱いとなります。
救急で入院し、集中的に治療を行うことで3か月前後の短期間で退院となる患者さんがほとんどです。
症状もさまざまで年齢もさまざまですので、看護師の負担は大きくなりますが、スキルアップをめざすことができます。
急性期治療病棟
症状が悪化した患者さんの急性症状を落ち着かせる治療を行います。
慢性期病棟
症状が急変することはあまりないものの、長期間の入院による治療が必要な患者さんの治療を行います。
解放病棟(一般病棟)
開放病棟は自由に病棟から出入りすることができ、一般の病院の病棟とほとんど変わりません。患者さんの状態も安定していて、理解力もあります。
患者さんは本人の意思に基づいて入院します。
昔の精神科の病院はマイナスイメージが多かったですが、今は清潔感のある病院が増えつつあります。このように、ひとことに精神科の病院と言ってもさまざまなタイプがありますので、あなたにいちばん合うものはどれかを良く検討してください。
2.精神科の看護師とは?
2.1.精神科での仕事内容、見えてくるメリットとデメリットとは?
精神科の看護師の仕事は患者さんのメンタル面が落ち着くまでのお世話が中心となります。
具体的には、食事や排せつなどの介助、移動のサポート、服薬する薬の管理(静脈注射や筋肉注射も)、バイタルなどの健康管理などが挙げられます。
薬物療法もありますので、服薬する薬の管理は重要です。さらに、精神疾患のことをきちんと理解し、いかに患者さんのメンタル面を落ち着かせるように対応するかが大切です。
もちろん、注射や採血といった基本的な医療行為も行います。
病院によっては、医師の診察の前に看護師が自覚症状や日常生活の様子などを聞く予診を任せているところもあります。
中には自らを傷つけたり周囲に危害を加えたりする患者さんもいます。
患者さんの安全を確保するために、複数人で対応することもあります。体力勝負になることもあります。
暴言を吐く患者さんもいます。メンタル面に支障をきたす可能性もあるため、あなた自身にも仕事は仕事だと割り切る気持ちと忍耐力が求められます。
大変な面も多々ありますが、日常生活のサポートが主な仕事となるため、患者さんと向き合い回復するまでを見届けることができます。
もちろん、一人で患者さんのサポートを担当するわけではありません。医師、臨床心理士、作業療法士、その他の医療従事者とともにチームで仕事をこなします。そのため、スタッフ同士の信頼関係も重要です。
2.2.勤務時間はどれくらい? 気になる残業と夜勤のこと
入院病棟もある病院は夜勤も発生します。
残業の有無は慢性期病棟なのか、急性期病棟なのかで大きく変わってきます。
急性期病棟は残業が日常的にありますが、慢性期病棟はほとんど残業がありません。
仕事内容が患者さんの日常生活の介助がメインで、容体が急変することもほとんどないからです。
「残業が少なく、他の診療科に比べると落ち着いている。」といった魅力だけで精神科の看護師を目指してはいけません。
応募する病院の体制によって大きく変わりますし、大変な面もあることを十分理解しておきましょう。
2.3.精神科の看護師に必要なものは?
仕事は仕事と割り切れるメンタル面の強さと体力
精神状態の不安定な患者さんが相手です。延々と愚痴を聞かされたり、暴言を吐かれたりすることもあります。真に受けずに、仕事は仕事と割り切り冷静に対応できる強さが必要です。また、日常生活の介助や患者さんの安全を守るためには体力も必要です。
人間関係を築く
精神科の看護師は臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士など医師以外のスタッフとも日々やり取りをします。そのため、人間関係を円滑に築ける力が大切です。この力は患者さんとのやり取りにも生かされてきます。
2.4.精神科の看護師のキャリアプラン
精神科の看護師は患者さんひとりひとりの療養上のお世話が主な仕事になるため、あなたの看護スキルが患者さんの回復へとつながります。さまざまな要件があり、研修期間が長いものもありますが、是非資格取得にチャレンジしてください。
日本精神科看護協会の精神科認定看護師制度
日本精神科看護協会が定める資格です。教育課程を修了後に認定審査に合格し、精神科の看護領域でレベルの高い看護スキルと知識を持つと認められた人のことです。
レベルの高い精神科看護を実践し、周囲の相談に応じて指導を行うことができます。
日本精神科医学会の認定看護師
精神科病院、その他精神疾患を有する患者さんの対応を行う医療施設及び保健福祉施設等に勤務する常勤看護師について、スキルアップを図ることで精神科看護のレベルを上げるため、技能判定と面接を実施し、水準に達した人のことをいいます。
そのほか、通算5年以上常勤看護師として勤務し、精神科臨床経験が通算5年以上あり、日本精神科医学会が定める通信教育を修了し、日本精神科医学会の会員であることが要件です。

日本看護協会の専門看護師で精神看護
複雑な看護問題を持つ人と周囲の人に対してレベルの高い看護ケアを提供できるようにすることを目的としています。看護系大学院修了者で実務経験が5年以上あり、うち3年以上は精神看護分野の実務経験であることが要件です。書類審査と筆記試験に合格する必要があります。
下記のような役割を果たします。
・看護者と周囲の相談に応じる。
・看護者に必要なケアがスムーズに行われるよう、関わる人々の調整を行う。
・看護者の指導を行う。
・自身の専門知識と看護技術のスキルアップのための研究活動を行う。
2.5.新人看護師が精神科を目指すのは?
精神科はメンタル面の治療を行います。それ以外の診療科は体の治療を行います。
そのため、まったく畑が違います。まずは看護師として必要なスキルを身につけたいと考えるのであれば精神科への就職はおすすめできません。
そうではなく、精神科のこともきちんと理解した上で、精神科の看護師としての道を究めたいと考えるのであれば問題ありません。じっさいに、1年目から精神科への配属となるケースも稀ですがあります。
3.精神科の看護師求人を探す!就職活動
3.1.求人を見る上で気を付けたいこと
精神科の看護師は、他の診療科に比べて勤続年数が高いです。臨床経験年数は平均で18.1年です。
そのため、他の診療科よりも求人が少ない傾向にあります。
あなたの希望条件(勤務地、給料、その他福利厚生)をすべて満たす求人はなかなか見つからないかもしれませんので、希望条件の中でも重要視するところを決めておいた方が良いです。
とくに気を付けて欲しい点をご紹介しますので、是非参考になさってください。
条件:応募する病院の種類・診療内容
先ほどご紹介したように、精神科の病院といってもさまざまな種類があります。あなたがどのような働き方を希望するのかしっかりと考えてください。
次に、診療内容をチェックしてください。とくにクリニックや総合病院の精神科は確認されることをおすすめします。
条件:男性看護師の割合が20%以上であること
精神科の病院は少なくなってきているとはいえ、患者さんが暴れることもあります。その際にサポートしてくれる男性看護師が十分であるかをチェックしてください。
条件:新人看護師に対する教育制度の有無
精神科は特殊な診療科であるため、他の診療科での経験がある看護師の方もいちからのスタートとなることが多いです。そのため、研修などの教育制度をきちんと実施しているかチェックしてください。
条件:患者さんへの対応方法は決まっているか?
他の診療科とは異なり、患者さんは精神的な疾患が原因で予想できないことをすることがあります。保護室への対応方法、患者さんが危害を加える行動を起こした際の対応方法など、それぞれどのように対応するのか決まっているかチェックしてください。
いかがですか?精神科ならではのチェックしてほしい点が多くあります。応募前に確認しづらい項目もありますので、看護師の転職サイトも上手に活用してください。
3.2.おすすめの看護師転職サイト
看護師の転職サイトでは、職場の人間関係やその他勤務条件などあなたが聞きにくい情報も多く提供してもらえます。大手をメインに複数社登録し、上手に活用してください。


4.まとめ
精神科の看護師について触れましたが、いかがでしたか?
他の診療科とは異なり、関心はあるものの就職する勇気はないという方も多いと思います。
しかし、今回触れましたように一度就職すると続ける方が多いのが精神科の看護師でしたね。チャレンジすることで、次はキャリアプランが見えてくるかもしれません。