看護教員とは、看護師を目指す生徒の指導を行う教員のことです。
病棟看護師に比べると、日勤のみで土日祝日が休みの規則正しい生活を送れるため、人気の高い職種です。
その看護教員には3種類の選択肢があります。
高校の看護科、大学・短大は看護学教員と呼びます。専門学校は専任教員と呼びます。
どちらもあわせて看護教員という呼び方をしますが、それぞれ資格取得までの道のりや、就職するまでの道のりには大きなちがいがあります。それぞれごとにご紹介しますので、お役に立てば幸いです。
目次
1.大学・短大の看護教員を目指すには
まず、看護師を育てる立場となりますので、最低5年以上は医療機関における臨床経験を求められます。
1.1.資格取得までの道のり
看護師の資格とは別に学士、修士、博士の学位を必要とする大学・短大が多いです。
教員免許などは取得しなくても大丈夫です。
大学の看護教員の職位は助手、助教授、講師、准教授、大学教授となっており、ほとんどの求人は助手からの募集となります。
職位別に求められる学位も異なり、助手は学士以上、助教授、講師、准教授は修士以上、教授は博士以上の学位を求められることが多いです。
なぜ、看護師としての臨床経験とは別に学位を求められることが多いのか?ですが、
大学・短大には看護師を育てる場所とは別に、日々進化を続ける医療に関する研究機関としての働きもしています。
そのため、看護教員として学生を育てる仕事とは別に、論文発表の経験も求められます。
ただ、学士取得をした、修士課程を卒業したといった資格のみでは採用されるのはむずかしいため、あなた自身の勉強や研究が必要です。
それだけ、大学・短大の看護教員を目指す道のりは遠く、あなたの地道な努力が必要とされるということです。
1.2.就職するまでの道のり
大学・短大の看護教員の求人は、公募によるものがほとんどです。応募者の中から、看護教員の選考基準にしたがって、教授会の選出ののちに人事教授会の投票によって決まります。
そのため、教授や研究室とのつながりがあり、あなたの過去の経験や成果を理解してくれる人があることがもっとも採用される近道です。
それ以外の方法も含め、下記のような方法があります。
求人の件数自体が少ないため、ありとあらゆる方法を活用し、募集があった際にはすぐに応募できるようにしておきましょう。
1.2.1教授が担当する研究室とのつながりを活用する
教授が担当する研究室であなたが関心のある、あるいは過去に研究してきたものと類似した研究参加への募集があれば、応募してください。その際も、教授への丁寧な連絡がキーとなります。
1.2.2.JREC-IN Portal 研究者人材データベース
国立研究開発法人 科学技術振興機構が運営する研究者の採用が掲載されたデータベースです。研究分野により、あなたが応募したい求人があるか検索することができます。
教授や研究室とのつながりがなくても、このデータベースを活用することで道が開けることもあります。
1.2.3.ハローワーク
上記に比べると求人の件数は少ないものの、非常勤の求人であれば希望がもてます。
最初は非常勤からコツコツとスタートし、いずれは常勤を目指したいといった考え方のもと、ぜひハローワークも活用してください。
1.2.4.看護師の転職サイト
マイナビ看護師、看護rooといった看護師の転職サイトもおすすめです。求人がいつでもあるわけではありませんが、色々な道を探るためにもぜひ活用してください。
転職アドバイザーからのアドバイスを受けることもできますので、なかなか看護教員になれないといった悩みに対するアドバイスを受けることもできます。
2.専門学校の看護教員を目指すには(看護師等学校養成所)
大学・短大の看護教員と同じく、最低5年以上は医療機関における臨床経験を求められます。
2.1.資格取得までの道のり
専門学校の看護教員になるには、看護師養成所専任教員資格を取得しなければいけません。
まず、都道府県ごとに行われる専任教員養成講習会(旧:看護教員養成講習会)を受講する必要があります。
受けられる条件は主に下記のような条件で、講習会が終了した後は受講した都道府県での勤務予定、あるいは勤務が確定していることが条件とされることが多いです。
大半の人は勤務先が確定しており、その後に受講して資格を取得しています。
受講料が必要となりますが、勤務先によっては受講料を負担してくれたり、講習会を受講している期間も給与を支給してくれたりすることもあります。
【専任教員養成講習会の受講資格】 ※都道府県によって若干のちがいがあります。 |
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保健士、助産師、看護師のいずれかで5年以上の看護業務に従事している |
看護業務から5年以上離れていない |
過去に看護教員養成講習会を受講していない |
心身ともに健康であること |
医療機関または看護師等学校養成所に勤務し、施設長からの推薦を受けられる者 |
これ以外にも資格を取得する道はあります。看護大学で看護教育に関する単位を取得したり、大学が実施する通信教育を受講したりすることもできます。
まずは就職先を見つけ、そのあとに資格を取得する方法を就職先と相談の上で決めるのがベストだと考えられます。
2.2.就職するまでの道のり
専門学校の看護教員の募集は主に推薦で行われます。
学校側から卒業生の中でも系列の病院で勤務するスキルの高い看護師に声を掛けたり、なかなか取得のむずかしい資格を取得した看護師に声を掛けたり、優秀な研究成果を発表した看護師に声を掛けたりします。
そのため、まずはあなたの卒業校に声を掛けたり、人を頼ったりするのがベストです。
そのほか、求人数は少ないですが、ハローワークや看護師の転職サイト、市町村の公式HPなどもまめにチェックしてください。
3.高校(看護科)看護教員を目指すには
先にご紹介した2つと同じで、最低5年以上は医療機関における臨床経験を求められます。
3.1.資格取得までの道のり
高校(看護科)の看護教員を目指すには、高等学校教員(看護)の免許が必要です。
免許には普通免許状、特別免許状、臨時免許状の3種類があります。それぞれ詳しく触れていきます。
3.1.1.普通免許状
高等学校教員(看護)の免許を取得するためには、大学あるいは大学院に通学する必要があります。通信課程は現在ありません。
そのため、現役で看護師として勤務されている方は一度退職し、通学することになります。
高等学校教員(看護)の免許は一種免許状(大学卒業程度)と専修免許状(大学院修士課程修了程度)の2種類があり、大学あるいは大学院のいずれ卒業するかで異なります。
高等学校教諭(看護)の免許を取得するために必要な単位を取得できる大学・大学院は限られており、あなたの住まいによっては下宿が必要なケースもあります。文部科学省のホームページにてご確認ください。
3.1.2.特別免許状や臨時免許状
それぞれの都道府県によって特別免許状と臨時免許状を取得するために必要な条件は異なります。
特別免許状は都道府県が定める条件をクリアすれば取得できます。
臨時免許状は期限付きとなっており、高等看護科の助教授として勤務することになります。
臨時免許状の期限がきたら免許がなくなるわけではなく、何度でも更新できますので、期限なく高等看護科の助教授として勤務することができます。
3.2.就職するまでの道のり
公立高校は都道府県が実施する教員採用試験に合格しなければいけません。高校(看護科)の数自体が少ないので、とてもハードルが高いです。
求人の件数が少ないので、ハローワークでの募集や、ナースバンクでの募集もマメにチェックしてください。
4.看護教員の仕事内容と求めらえるスキル
4.1.看護教員の仕事内容
看護教員の仕事内容は、看護師としてこれから勤務する学生が医療現場で勤務する際、理想と現実のギャップや学生時代と医療現場のギャップに苦しむことのないようにしっかりと指導することが主な仕事内容です。
さらに短大、大学で働く場合は研究室での研究発表や論文作成なども付随します。あなたが研究を行うこともあれば、教授の研究をサポートすることもあります。
4.2.看護教員に求められるスキル
看護教員に求められるスキルには、下記のような点があります。
4.2.1.学生に分かりやすい授業を行う
看護教員として勤務するにあたり、質の高い看護技術と多くの知識はあなたの武器になります。
しかし、それを誰かに指導していくことができるかどうかはまた別問題です。
学生とあなたとでは世代が離れているため、考え方もスキルもまったく違います。
教員としての立場は保ちつつ、分かりやすい言葉で学生に寄り添いながら指導していく必要があります。
4.2.2.今の医療現場に合わせた指導を行う
看護教員になるためには、どの教育機関においても最低5年以上の臨床経験が求められる点は共通しています。
そのため、看護教員となる人はある程度の看護師としてのスキルをもっています。
しかし、あなたが看護教員として勤務している間は、変わり続ける医療現場の状況や看護業務に関しては自らが積極的に動かない限り対応することができません。
あなたの過去の臨床経験だけをもとに指導するのではなく、そのときに合わせた最新の情報で指導することが大切です。
4.2.3.分かりやすく伝えることを忘れずに
学生は分かっているものとして自分の目線での指導をしてしまいがちです。
相手の目線までおりてきて、分かりやすく伝えることを忘れないでください。
そして、できる限り心に余裕を持ち、学生の質問には答えるようにしてください。
いかがですか?日々変わり続ける医療現場の情報収集をきちんと行い、学生の目線で丁寧な指導を行うことが大切です。
5.看護教員として働く事のメリットとデメリット
5.1.看護教員として働く事のメリット
看護教員として勤務するにあたり、下記のようなメリットが挙げられます。
5.1.1.学生の成長を見守ることができる
なぜ看護師を目指しているのか?その理由は学生によりさまざまで、在学中に色々なことを悩み、成長していくことでしょう。
あなたは看護教員として必要なことを指導する以外に、ときには相談に応じることもあります。
今までできなかった看護処置ができるようになったことを共に喜ぶこともあります。
そして最終は看護師の国家資格を取得し、卒業するまでを見守ることができます。
5.1.2.夜勤がなく、カレンダー通りの生活ができる
病棟勤務をしている看護師の多くが夜勤をこなし、残業もこなしています。
看護教員はほぼカレンダー通りの勤務で夜勤がありませんので、規則正しい生活を送ることができます。残業も繁忙期を除けばさほどにありません。
5.1.3.さまざまな可能性がある
看護教員として指導をする立場にあるため、あなた自身が日々勉強をすることになります。
あなたが望めば、関心のある分野に関して深く研究することができます。
そのために必要な文献や資料は身近に多く存在し、上司などの人間関係を頼って指導を受けることもできます。どん欲になればなるほど、知識を増やすことができます。
さらに、認定看護師や専門看護師を育てる教育機関への転職も目指すことができます。
5.2.看護教員のデメリット
看護教員として勤務するにあたり、下記のようなデメリットが挙げられます。
5.2.1.看護師としてのつらさも伝える
学生が看護師として勤務するようになってから理想と現実のギャップに苦しむことのないよう、人の命を扱うことの重さ、ピリピリした医療現場の雰囲気、女性が多いゆえの職場環境といったことも学生に伝えていくことが大切です。
そのため、ときには学生から嫌われることもあります。さじ加減がむずかしいですが、飴とムチをうまく使い分けて指導することが大切です。
5.2.2.看護師としてのスキルアップができない
看護教員としてのスキルアップはできますが、医療機関から離れることで看護師として現場で働くためのスキルアップはできなくなります。あなた自身がどのような道でスキルアップを目指すのかきちんと考えてから、看護教員を目指しましょう。
5.2.3.病棟看護師に比べると年収が下がる
病棟看護師のほとんどが夜勤をこなします。日勤のみの看護師とはさほどに年収が変わらないですが、夜勤をこなす病棟看護師に比べると必然的に年収は下がります。
あなたが自分のライフスタイルを優先するのか、それとも年収を優先するのかがカギとなります。
5.2.4.学校がある間は休みにくい
学校が開校している期間、授業はほとんど毎日行われます。ほかの看護教員に自分が担当する授業の指導を依頼することはむずかしいため、よほどの事情がない限りは休むことができません。家庭がある方の場合は、家族との協力が必要です。
6.まとめ
看護教員について色々な目線から触れましたが、いかがでしたか?
3つの教育機関に共通していえるのは狭き門であること、そのため、求人を見たらすぐに応募できるようにしておく必要があることです。
今は看護教員となる未来の自分を想像しながら、医療現場で奮闘する日々かと思います。ほんとうにお疲れさまです。
最後にお願いがあります。
あなたの学生時代に比べ、今は学校の環境も変わっています。
親にも先生にもほとんど叱られた経験のない学生もいることと思います。
あなたが指導した学生が看護師となり、こんなはずではなかったとすぐに看護師を辞めてしまうことのないよう、ときには厳しさも見せて指導にあたってください。