皆さんは“グリーフケア”という言葉を知っていますか?
グリーフ(悲嘆)とは、例えば死別を経験した時に表れる心と体の反応や違和感を指します。
そんな状態と向き合いケアを必要としている人に寄り添う仕事が“グリーフケア”です。
今回は、この“グリーフケア”についてご紹介したいと思います。
1.グリーフケアとは何か
誰もが人生において必ず一度は経験する“死別”。とても悲しく、様々な感情を持ちますね。
その辛い経験から立ち直りたい気持ちでいても、それとは裏腹に心がついていかない、体がついていかない・・・こんな経験をする人も少なくありません。
こういった人達に寄り添い、サポートしていくことを“グリーフケア”と言うのです。
(1)どうしてグリーフケアが必要とされているのか
人が死別を経験し落ち込んでいるとき、その悲しみに寄り添う人の存在感が薄れていることにあるとも言われています。
悲しい経験をしたとき、本当は思いっきり泣いて悲しむことも必要ですが、寄り添う存在が居ない場合、その感情を押し殺して日々の生活に戻るため、その悲しさが十分に解消されることなく、月日が過ぎていくのです。
絶望感さえ覚えてしまうこの時期にしっかりとしたケアがないと、その人の今後の生き方や発送までもネガティブな方向へ行きかねません。
グリーフケアは、そういった人達の回復はもとより新たな一歩が踏み出せるきっかけとなることも可能なのです。そのため、現代では、グリーフケアが求められているのです。
(2)グリーフケアの役割とはなにか
グリーフケアの役割は、その人の話に耳を傾け、寄り添うこと。特別に何かをするというより、その人に寄り添える存在でいることが大切です。話を聞くだけ?と思いがちですが、この寄り添うということが実はとても難しいのです。
向き合う相手がグリーフ(悲嘆)の状態から回復できるよう、ゆっくり時間をかけながら接していくことが重要です。病院に勤務する看護師は、とくにこういった場面に遭遇することも多いかと思いますが、時間に追われる環境でもある中、どう時間を見つけケアをしていけるかということは病院全体の課題となることもあるようですね。
2.日本人が感じるグリーフ(悲嘆)の反応とは?
では、実際にグリーフ(悲嘆)の状態に陥ったとき、どんな反応を起こすのかをご紹介したいと思います。今回は、日本人に起こりやすい症状4つを上げていたいと思います。
下記に起こるグリーフ(悲嘆)の4つの反応を繰り返し、その狭間で揺れ動く状態が続くわけですから、相当辛い状況ということはお分かりいただけるのではないでしょうか。
(1)心理的症状
故人や故人との出来事を意識的・無意識的に思い出し、アルバムを見返す、思い出の場所に出向く等の行動をします。(思募)その時に感情が動き、不安、孤独や寂しさ、無力感等が症状として表れます。
この心理的症状は、死別を経験したときに、最初に表れる症状として一番分かりやすいのではないでしょうか。
(2)身体的症状
心理的症状の症状があったのちに、体調に表れるケースが身体的症状です。例えば、眠れない、食欲がなく食べられなくなる、めまいがする、体重が減る、疲労感などの体の不調を覚えます。この症状は、身体的症状の代表的な例です。
(3)行動的反応
日常生活における行動の変化もグリーフ(悲嘆)の反応として見られることが分かっています。例えば、無意識に涙が溢れることやぼーっとすることが増えるなどもその一つです。また“鬱”の症状を発症し、無気力になるといった反応も同様です。
(4)認知的反応
故人が亡くなったことを認知しているが故に、「もっと頑張らなければ」と現実へ対処しようと奮い立たせすぎることもこれに当たります。故人亡きあと、必要以上に仕事に打ち込むなども同様の反応と考えられています。
3.グリーフケアの流れとポイント
次にグリーフケアの流れについてご紹介したいと思います。グリーフケアを行う場合には、グリーフ(悲嘆)の症状がどの段階にあるのかを知っておくことが大切です。反応を良く観察し、どの反応なのかを見極めて対処していくことが重要です。
悲しみを乗り越える4つのステップについてとその状態の特徴と対応を下記4つにまとめましたので、是非ご覧ください。下記の通り、ショック期に始まり、その後喪失感が襲ってきます。その後、閉じこもって周りとの関係を遮断することもあるでしょう。しかし、これを乗り越えると再生へと向かいます。
このプロセスの中で、2項でご紹介した様々な症状が出て人は苦しみます。このプロセスを1日の中でも繰り返しますので、回復までは週単位や月単位等長い期間で捉えてケアをすることが大切です。
よくこの状況に陥ると「私は駄目だ」「私は弱い人間だ」「私は病気だ」と悲観的になる人が多いようですが、人である以上この反応は当たり前の反応なのです。誰でも経験すれば、このプロセスを体験します。ですから、ケアする側もこのことを上手に伝えてあげるとグリーフ(悲嘆)の状態にいる人の辛い気持ちを軽減するきっかけになるでしょう。
※後日もっと詳しくプロセスを図解かしてそれぞれの時間と内容、どういったことを意識した支援が効果的かを調べる。
(1)ショック期
(2)喪失期
(3)閉じこもり期
(4)再生期間
4.看護師に求められているグリーフケア
次に専門分野である看護師に求められるグリーフケアはどういったことが求められるのでしょうか。看護師として働いていると、問題に直面した患者とその家族と接する機会が多くありますね。
もしあなたが悲しみへの対処法を理解していれば、グリーフケアが適切にできれば、救われる患者と家族も多いのではないでしょうか。実際に、グリーフケアを行うステップとして実践してほしい事項をまとめてみました。是非参考にしてみてくださいね。
(1)日本人が感じる4つの喪失感を知る
2項でご紹介した日本人が感じる4つのグリーフ(悲嘆)的反応を理解することから始めましょうそして、3項でご紹介したプロセスのどの段階にあるかを知ることが大切です。
(2)看護師がどう関われるのか、看護の現場で起きる場面毎に自分なりの答えを持とう
看護をしていると遭遇する場面において、患者と家族にどう寄り添うかなど経験を通じ、自分なりの答えを持つことが大切です。
以下で代表的な場面をいくつか紹介します。是非自分なりの考えやスタンスをもってケアにあたれるようにしましょう。
①場面1 臨死期
臨死期では、その家族は予期悲嘆に陥ることがあります。特に求められるのは、精神的配慮です。そんな時のケアとして、重視するのは①患者の痛みの緩和に努めることで家族の苦しみ(心残り)を軽減させること、②尊厳を保たれていることを感じさせるケアをすること、③ケアに対する意向を事前に確認すること、この3つが重要です。
②場面2 看取り〜臨終時
残された家族に対するグリーフケアが需要になります。この時、医療者が逝去後にどういったケアをするかが、その後の家族のグリーフ(悲嘆)の状態にも影響すると考えられているため、とても重要になります。
一般的な家族の反応は、①泣き崩れる②医療者への怒りを覚える③淡々と事務的な手続きを行う④何をしてよいか分からない状態に陥る等の4つが代表的です。
5.グリーフケアを学ぶには
グリーフケアを専門的に学びたいと思った時、どんな方法で学べるかをご存知でしょうか。
この項では、グリーフケアの学びを深める方法としてオススメな3つを下記にご紹介します。
(1)身近なグリーフケア講座を受講する
医療従事者だけではなく、一般の人も受講することができる講座を開講しているところもあります。医療従事者ではないけど、自分のため、家族のために学んでみたいという方は是非基礎的なところから学んでみることをオススメします。
最近では、オンラインスクールで学べるものもあり、手軽に勉強することが可能となっています。
(2)グリーフケアアドバイザーの資格を取得する
より専門的に知識を深めたいという場合には、資格取得講座へステップアップしましょう。その入り口の資格としてあるのが、“グリーフケアアドバイザー”です。資格は、2級(初級)・1級(中級)・特級(上級)の3つが用意されています。2級では、基礎的な知識の習得やケアの原則を学ぶことを目的とした内容になっており、座学中心の講座です。
1級では、複雑な事例や実践方法を学び、ゲスト講師の講話の他、グループワークを含む内容になっています。アドバイザー同士の交流も深めることができる良い機会となります。
そして、特級ではワークッショップを開催したい、技術を高めたいという人向けの上級講座です。グリーフケアの普及活動の先駆者として活躍できるチャンスもあります。
(2)グリーフ・カウンセラーの資格を取得する
グリーフカウンセラーセンターが主催する養成講座があり、そこで“グリーフ・カウンセラー”の資格取得が可能です。入門編と基礎編、上級編に分かれています。アドバイザー資格との違いは協会が異なるため、実践についてはオリジナルメゾットを取り入れているのが特徴です。また、資格試験に向けてのトレーニングクラス等も充実しているのが特徴です。
参考データ:http://gcctokyo.com/education/trainingcourse/ (2017年9月時点)
(4)日本で一番有名な上智のグリーフケア研究所
上智大学では、グリーフケア専門研究所があり、大変有名です。現在は、四谷キャンパス(東京)と大阪サテライトキャンパス(大阪市北区)の2か所で研究教育活動を実施しているようです。
研究所に関するトピックスが発信されており、そこにグリーフケアに関するセミナーやシンポジウムの開催情報が掲載されます。
最初の入り口として、大きなイベント型セミナーやシンポジウムに行ってみるところから始めるのも良いですね。
開催される内容も充実していて、対象者が遺族向けといったものもありますので、一般の人でも気軽に参加することが可能です。