看護師の転職手段はいろいろありますが、ナースセンターの利用を検討しているという方も多いのではないでしょうか。
看護職で転職を考える場合にeナースセンターの利用を検討することはとても自然なことです。
しかし、きちんと内容を理解していなければ自分の状況に合う転職方法かどうかはわかりません。
この記事でeナースセンターの利用方法やメリット・デメリット、他の転職方法との違いなどを知り、自分の状況や転職の希望と照らし合わせてスムーズな転職活動を実現でいるよう学びましょう。
目次
1.eナースセンターとは
各都道府県ナースセンターで実施している無料職業紹介の業務をインターネット上に展開したものがeナースセンターです。
看護職の方や看護職を目指す学生および看護職を採用する求人施設の方がナースセンターに直接足を運ぶことなく、インターネット上で、登録、検索、紹介依頼などができます。
e-ナースセンターでは職業紹介以外にも、看護師等学校養成所や研修、イベントなどの様々な情報を無料で提供しており、全国の看護学校情報や資格取得情報、奨学金情報なども閲覧できるようになっています。
1-1.eナースセンターの前身であるナースセンターとは
ナースセンターは看護師や助産師、保健師など看護職のハローワーク的な存在になります。
看護協会が運営しており、看護職員の就業促進や育成に関する情報提供などを行っています。
ナースセンターが行っている事業は以下の3つになります。
①ナースバンク事業
看護師の人材確保を目的に職業紹介をしています。
看護師に対して無料で医療機関の求人情報を提供し、求人の掲載料や人材紹介料を求人側である病院等からも徴収していません。
また再就職に不安を持つ看護師のために、研修会や就職相談会なども行っています。
②訪問看護支援事業
近年訪問看護サービスの重要性が増しており、訪問看護師は今後ますます必要とされていくと考えられます。
ナースセンターでは、安価な授業料で研修を行い、訪問看護についての知識や技術を学べる体制を整えることで、訪問看護に対し多くの人材を供給しようとしています。
③「看護の心」普及事業
より多くの国民に看護の心を持ってもらえるように看護の道に進みたい学生、社会人のための進路相談を受け付けているほか、看護の一日体験を行うなど、「看護の心」の普及に努めるための事業を展開しています。
1-2.ナースセンター利用の流れ
①e-ナースセンターへ登録する
eナースセンターを利用するためには登録が必要になります。
看護師資格がまだ無く、今後取得予定の人も登録ができるようになっていますので、これから就職活動をしなくてはならないという人でも、あらかじめ求人を見て情報を得ることができます。
②相談員へ相談・研修への参加など
登録が済んだあとは、相談員へ転職の悩みや疑問を相談したり、スキルを身につけるための研修に参加したりすることができるようになります。
これらのサービスを積極的に活用することで転職活動を円滑に進めることができるでしょう。
③求人を検索する
パソコンやスマートフォンからeナースセンターへアクセスして求人を検索します。
ここで、応募したい求人があった場合には直接応募するか、ナースセンターを介して応募します。
④面接へ行く
eナースセンターや求人施設とのやり取りを経て、面接となります。
以上がナースセンターのサービスを利用して転職活動を行う大まかな流れになります。
2.eナースセンターを利用するメリットとデメリット
2-1.メリット
・日本看護協会が運営しているから信頼できる
eナースセンターは日本看護協会が運営しているため信頼性が高く、個人情報が不正に流用されるなどの心配はありません。
民間企業の転職サイトが信用できない方や個人情報の登録に気が引けてしまう方にも安心して就職活動を行うことができるでしょう。
・職員は元看護職の人がほとんどなので安心して相談できる
看護師は特殊な職種なので、悩みや気持ちを理解してもらうのが難しいことも多いです。
eナースセンターの職員はほとんどが看護師資格をもつ経験者なので話が通じやすく、転職に際しての様々な悩みや相談にきめ細かく対応してもらえるでしょう。
・自宅に居ながら探せる
看護師は忙しい仕事なので、何度もナースバンクを訪れることはとてもむずかしいです。
eナースセンターではユーザー登録をすれば求人検索から応募までのステップをすべてインターネット上で完結することができるので、自宅で利用することができとても便利です。
・転職に役立つ研修がある
看護師資格を持っているけれど子育てや介護などの理由で現在は働いていない「潜在看護職員」の復職に向けた研修や、訪問看護事業に関する研修、転職に役立つ研修など、様々な取り組みをしています。
・地方の求人に強い
民間の転職エージェントでは都心や一部の地方都市の求人に強く、全国対応していないところが多いですが、eナースセンターでは各都道府県が主体となって行っているため、地方求人に強いという特徴があります。
2-2.デメリット
・転職代行してくれることが少ない
民間の転職サイトでは面接日の設定はもちろん、給与や休日などの条件交渉や自身の長所のアピール等を代行してもらえますが、eナースセンターでは面接日の設定以外は全て自力で行わなければなりません。
基本的に自分で探して応募をすることになるため、求人を探す時間が取れない忙しい人は、転職が決まるまでかなりの期間を要することになります。
・登録から応募までに時間と手間がかかる
eナースセンターを利用するためには会員登録が必要になります。
会員登録ではプロフィールや求職者情報など入力項目が多くかなり手間がかかる上に、求人検索機能なども使い勝手が悪く、希望の求人をさがしづらいです。
またインターネット上でのやり取りのためタイムラグが生じたり応募から数日待機期間があったり、スピードに欠けています。
・求人数が少なく、偏っている
民間の看護師転職サイトと比べて、求人数にかなりの差があります。
eナースセンターは病院やクリニックが求人の登録を行う際にとても手間がかかる上に、使い勝手の悪さから求職者の利用も多くなく、結果として応募がほとんど来ずに、求人情報の掲載をやめてしまう病院も少なくありません。
また登録している病院は、大規模な病院は少なく、中・小規模の病院や診療所が多くなっています。
eナースセンターのみで転職活動をすると、選択肢がかなり限られてしまうかもしれません。
3.eナースセンターの利用方法
ステップ1:ユーザー情報の登録
eナースセンターを利用して転職活動をする場合はユーザー情報の登録が必要になります。
操作はパソコン、スマートフォンともに利用可能で日本看護協会の「eナースセンター」から登録ができます。
氏名やメールアドレスを入力するとユーザーIDの登録ができ、申請したメールアドレスに届く「求職者ID申請受領通知」から生年月日や住所、看護師免許証番号などユーザー情報の登録を行います。
ステップ2:希望条件を登録
ユーザー情報の登録が完了すると、「求職者(看護職)登録通知メール」が届きます。
そこから「プロフィール」と「求職者情報」の2種類のデータを登録します。
プロフィールでは主にこれまでの職歴を、求職者情報では転職の希望条件などを回答します。
ここで登録した情報は施設に応募した時に求人施設側が事前に確認したり、求人施設から直接オファーがある場合もあります。
入力項目がとても多いため手間がかかりますが、ここでしっかりと入力することがスムーズな転職への鍵となります。
ステップ3:自動マッチング
「自動マッチング」は求人を検索しなくても希望の条件に合う求人を探してくれる機能になります。
求職者情報を登録する際に、自動マッチングを「希望する」と選択することで、希望に基づいた求人を毎週日曜日の夜間にマッチングし、登録条件にあった求人をメールで通知してくれたり、eナースセンターのトップ画面に表示したりします。
この機能をうまく活用して転職活動の効率を高めましょう。
ステップ4:希望条件にあった求人情報を紹介
以上の入力を終えると検索可能になります。
勤務地、待遇、施設の種類など、いろいろな条件から検索することができます。
条件を入れる項目が全部で9つありますが、すべての項目に入力してしまうと検索結果が数件、あるいは1件もヒットしなくなることもあるので、絶対に外せない項目だけ入力するようにしましょう。
ステップ5:応募
希望する求人が見つかったら応募することになりますが、応募方法は「システム応募」と「紹介応募」の2種類があります。
①システム応募
求職者が求人施設に直接応募する方法になります。
希望する求人が見つかりエントリーする場合、eナースセンターの登録画面を利用して自己PRなどを作成し、求職者が求人施設に応募します。
その後は求人施設からの連絡を待つことになります。
②紹介応募
ナースセンターを介して求人施設に応募する方法になります。
ナースセンターを介するという点以外、システム応募と変わりはありませんが、ナースセンターへ紹介問い合わせをしてから返信をもらうまでに数日かかるため、応募完了まで1週間程度かかってしまいます。
4.eナースセンター以外の転職方法と比較
4-1.ナースセンター以外の転職方法と比較
看護職の転職手段はたくさんのルートがあります。
それぞれの転職方法の特徴は次のようになります。
直接応募 | 求人広告 | 友人紹介 | ハローワーク | eナースセンター | 転職サイト | |
---|---|---|---|---|---|---|
採用側の 費用負担 |
×(なし) | ○(あり) | ×(なし) | ×(なし) | ×(なし) | ○(あり) |
ハードルの低さ | ○ | × | ◎ | ○ | ○ | × |
求人数 | × | × | × | ○ | △ | ◎ |
求人先の 情報量 |
× | × | ◎ | × | × | ◎ |
応募後の やり取り |
自分 | 自分 | 自分 | 自分 | 自分 | 代行 |
スピード | ◎ | △ | ◎ | △ | × | ○ |
転職活動の手間 | × | × | ○ | △ | △ | ◎ |
4-1-1.直接応募
病院のホームページなどから求人の有無を確認して直接応募する方法になります。
実際に転職した看護師のうち、15%~20%はこの方法での転職となっています。
メリット
・第三者を介する必要がなく直接やりとりするので話を早く進めることができる。
・入職に向けて積極性をアピールできる。
デメリット
・情報収集や事務手続き・応募先との連絡は全て自分で行うため負担が大きい
・給与や条件の交渉がしづらい
4-1-2.求人広告・情報誌
新聞広告や折り込みチラシ、フリーペーパーの求人に応募する方法になります。
メリット
・良い求人があればその場で電話をしてすぐに応募することができる。
・地方の求人に強く、自分の住んでいる地域に特化した求人情報を得ることができる。
デメリット
・広告スペースが狭いので、求人内容の詳細が乏しい。
・求人数が少ない
・週刊や隔週のものが多く、募集から締め切りまでの期間が短い
4-1-3.友人・知人の紹介
友人や知人からの紹介で転職する方法です。
メリット
・事前に職場の人間関係や雰囲気など内部情報を知ることができる
デメリット
・人気の職場では、縁故採用として色眼鏡で見られることがある
4-1-4.ハローワーク
転職をする看護師の2割以上の方は、ハローワークを通じて転職を実現しています。
メリット
・コストがかからないハローワークだけで採用活動をしている病院やクリニックたくさんがある。
・地方では都心以上にハローワークでの転職が根付いているため、地方の求人はとても充実している。
デメリット
・人気の病院などはハローワークに掲載していない場合がある
・病棟・二交代制・夜勤なしなど、看護師ならではの条件検索ができない
・窓口は朝から夕方までしか営業していない
4-1-5.転職サイト
転職サイトとは、求職者と採用側の間に立って、両者のマッチングをすることを生業としており、転職カウンセリングを受けられたり、自分の希望に合った求人を紹介してもらえたり、面接アドバイスを受けられたりと、様々なサービスを無料で受けることができます。
転職する看護師のうち実に30%以上の方々が、転職サイトを活用して転職を実現しています。
特に20代の女性看護師に限っては、55%の方々が転職サイトを活用して転職を実現してしており、どの転職方法よりも圧倒的に多くなっています。

メリット
・非公開求人などの好条件な求人に応募することができる
・施設の情報が多く、内情や詳細情報を教えてもらえることがある
・都市部の求人数が多い
デメリット
・担当者との相性があり、担当者の力量によって転職活動が左右される
・採用のハードルが高い
4-2.民間と公共では目的が違う
ナースセンターは税金で運営されている公共のサービスになるため、国の政策を実現することが最優先されます。
現在の主な政策は看護職の量を増やすことであり、看護職を社会に増やすことが最優先されます。
つまり、現職のナースが転職することよりも、休職しているナースに再就職してもらうことが優先されます。
現在休職してブランクがあるけれど、また働き始めたいという人には、公共のナースバンクは強い味方となってもらえる機関です。
一方で、民間のナースバンクは医療機関と看護師の出会いを目的としており、民間企業が運営しているので、医療機関側から報酬をもらって運営しています。
紹介手数料を出してでも優秀な人材がほしい医療機関が募集を出しているため、経営がうまくいっていて人気の医療機関が多いです。
採用のハードルは高いですが、給料や待遇の良いところが多く、また、募集が殺到するために非公開で求人を行い、より良い人材だけを紹介するようにしている人気医療機関もあります。
さいごに
看護師協会が運営している安心感や、再就職にむけての研修など、ナースセンターは看護師に特化した職業紹介がなされており、利用価値のある転職手段です。
しかし、求人検索の使い勝手の悪さなどが影響してか、看護師の利用者数はそこまで多くありません。
そのため、求人情報を掲載しても応募がほとんど来ず、掲載をやめてしまった病院・クリニックもみられます。
求人数自体があまり多くないため、eナースセンターだけではなくハローワークや民間転職サイトなど、他の転職手段と併せて利用するといいでしょう。
転職方法を選ぶのも転職活動をするのもあなたです。
あなたに合った転職方法を見極めてより効率の良い転職活動を行いましょう。