看護師として海外の現場で働くための具体的な方法

看護師不足は今や世界共通の問題となっており、看護師の需要は、世界各国に広くあります。

多くの看護師が海外でも活躍していて、看護師のグローバル化が進んでいます。

これから看護師になりたい人も、すでに看護師として仕事をしている人にとっても海外という選択肢は具体的なものとなっています。

そのため道も多く用意されており、本当に海外で働きたいという夢を持っていれば、決して難しいことではありません。

今回は、看護師が海外で働く方法について詳しく説明していきます。是非参考にしてみてください。

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1.海外で働くには

看護師として海外で働くには、大きく分けて以下2種類の方法があります。

それぞれのメリットデメリットを踏まえていまの自分の状況にあった方法を検討してみてください。

・看護ボランティア

看護ボランティアは、主に発展途上国などで、現地の人に無償で看護を提供します。

海外で働きたいけれど語学力に自信がない人や短期間だけ働いてみたい人にオススメです。

・国際看護師

国際看護師とは、海外の病院に勤務している日本人の看護師のことです。
海外に定住して働きたい人には、国際看護師がオススメです。

2. 看護ボランティア

まずは、看護ボランティアとして海外で働く方法について紹介していきます。

具体的に看護ボランティアを行っている主な団体は、下記の3つになります。

それぞれの概要情報を紹介しますので自分に合った団体へ問い合わせしてみると次の動きを教えてくれます。
是非動き出してみましょう。

2-1.青年海外協力隊

青年海外協力隊とは、日本政府の政府開発援助の一環としてJICA(独立行政法人 国際協力機構)が行なっているプログラムです。

原則として2年間ボランティアとして約70カ国の発展途上国へ派遣されるシステムで所属先によって活動内容や活動時間は全く異なります。

町のバザールのイメージ

2-1-1.応募資格

日本国籍を持つ満20歳から満39歳までに限られます。

募集によって異なりますが、看護師としての実務経験が3年以上必要になるケースが多いです。

語学力は、英会話日常会話程度(英検準2級・3級、TOFEL 410以上)のスキルが必要です。

2-1-2.青年海外協力隊赴任中の給与事情

現地生活費が1ヶ月285~755ドル(派遣先による)支給されるため不自由なく生活することができます。

住居は現地勤務先・またはJICAによって斡旋され、家賃・光熱費は全額支給されます。

派遣先までの旅行費、宿泊費、派遣前訓練での交通費、宿泊費等もすべてJICA負担となります。

現地でのお金とは別に、訓練期間と派遣期間のそれぞれに月々の手当てがあります。

訓練期間は月40,000円、派遣期間は月55,000円です。

帰国後にも一定期間手当てが支給されます。

2年間海外で過ごすことで自分を振り返り、自分の弱みも強みも明らかになってきます。

派遣先によっては手当てに見合わないほど大変であることも大いにありますが、
日本ではできない経験を積むことで、日本に帰ってからの職にその経験を活かすことができるでしょう。

青年海外協力隊について詳細はこちらから公式サイトへ

2-2. 国境なき医師団

国境なき医師団の活動は、緊急性の高い医療ニーズに応えることを目的としています。

つまり命のやり取りにつながるレベルのケアを必要とされている事が多いという意味です。かなりのプレッシャーがかかる現場が多いですが、その分得られるものも多く非常に役立つ経験となります。

民間・非営利の国際団体で、日本のみならず海外の医師などが多く参加しています。

派遣期間は6ヶ月~1年程度で、自然災害にあった被害者をはじめ、
紛争や貧困などによって満足のいく医療サービスを受けることができない地域に行ったり、
感染症が蔓延している地域へ出向き感染症の治療と予防を行うなど様々な医療業務を行っています。

空港のイメージ

2-2-1. 国境なき医師団の給与事情

初参加の場合、月額171,505円で参加期間が積算で1年を超えると昇給する仕組みになっており、
職歴などによって給料が上がることも少なくありません。

派遣先までの旅行費、派遣前研修に伴う諸経費、派遣前後の打ち合わせに伴う宿泊費用はすべて国境なき医師団負担となります。 

2-2-2.応募資格

2年以上の臨床経験があり、新人への指導や教育業務の経験があることが必要です。

語学力の明確な基準はありませんが、英語またはフランス語で多国籍のチームメンバーの
コミュニケーションが支障なくとれるレベルの語学力が必要です。

紛争が起こっている地域、感染症が蔓延している地域に派遣されることもあるため、
自身も危険な目に合う可能性、感染症にかかってしまう可能性はゼロではありません。

しかし、医療が充実しているわけではない地域へ派遣されるため、自分の知識と技術をフル活用する機会がかなり多く、
日本では絶対に経験のできない貴重な体験ができるのは確かです。

帰国後、その経験が医療現場で役立ったりさらなる活動の幅を広げてくれることでしょう。

国境なき医師団の公式サイトで情報を探すにはこちら

2-3. ジャパンハート

「日本発祥の国際医療NGO」として、医療支援活動のさらなる質の向上を目指して設立されました。

“医療の届かないところに医療を届ける”を理念に活動しています。

派遣期間は2日~1週間ほどの短期が中心です。

子どもが医療を求めているところ

2-3-1.給与

無給になります。

参加には、6万円~10万円程度現地医療活動費を支払う必要がありますが、活動地での宿泊費・食費は無償提供されます。

渡航費および海外傷害保険などすべて自己負担です。

2-3-2.応募資格

語学力やキャリアは不問です。

日本語と現地の言葉を話せる通訳が同行するため、語学力を心配することなく参加できます。

仕事をやめることなく1週間ほどの休暇を利用して参加することができます。

また免許を持っていない看護学生でも参加でき、年間を通じて海外ボランティアを募集しているので、
長期連休の時に合わせるなど自分の好きなタイミングで参加できます。

ジャパンハートの公式サイトで情報を集める

上記のように、看護ボランティア団体にはそれぞれ特色があります。

あなたが求めている活動内容に応じて、団体を選んでみるといいでしょう。

3.国際看護師

次に紹介するのは海外の病院で看護師として仕事をする方法です。

この国際看護師とは、海外の病院に勤務している看護師のことを言います。

国際看護師として働くために必要なものは以下の3点になります。

①現地の看護師資格

国際的に統一された世界共通の看護師資格があるわけではありません。

海外で看護師として働く場合には基本的にその国の看護師資格を獲得する必要があります。

外国の看護師資格がある看護師なら、登録制度という優遇措置によって試験が一部簡略化されており、
限定的な資格を取得できる場合もあります。

②就労ビザ

海外で働くには就労ビザが必要になります。
短期のボランティア活動などは不要なことが多いですが、長期間働く国際看護師は必ず必要になります。

国際情勢や国の状況によりビザの取得のしやすさは変わりますので、渡航予定の国の就労ビザについて事前に調べておきましょう。

就労のためのビザと医療

③語学力

海外で仕事をするために語学力は必要不可欠です。

大前提として現地の言葉が話せないとコミュニケーションがとれません。

医療機器・薬の名前や量などは間違える事は許されませんし、
患者の訴えや医療者間のコミュニケーションはとても重要となります。

また、英語はもちろんですが、派遣される国によってはスペイン語・フランス語なども必要になります。

英語を学ぶための時点

海外に定住して働きたい人やグローバルな看護スキルを身につけたい人には、国際看護師がオススメです。

3-1.アメリカで国際看護師として働く場合

アメリカ国旗

アメリカで看護師として働くためには、働く予定の州でナースの登録を行う必要があります。

登録を行うためにはまず、CGFNSに合格し、そのあとNCLEXの資格を取得することが条件になっています。

ちなみに、カリフォルニア州とニューヨーク州は、CGFNS合格なしに直接NCLEXの受験が可能とされています。
※実際に受けるタイミングで情報を確認をしてください。

CGFNS試験
<受験の条件>

・看護学校で2年以上の課程を修了し、看護師免許を取得している
・内科・外科・産婦人科・小児科・精神科・看護理論・臨床実習のいずれかを修得している

NCLEX-RN試験
<受験の条件>

・CGFNSに合格している
・TOEIC725点+TOEFL550点以上
・アメリカの短大看護学部、または大学看護学校の卒業資格

日本の看護師資格をもっていない方は、アメリカの大学や短大の看護課程を修了する方法が一般的です。

アメリカは典型的な実力社会であり看護師の給与も個人の実力次第で日本では考えられない高収入を得られる可能性もあります。

またアメリカの病院では日本の病院のように医者の決定権が全てではないので、日本よりも看護師の地位が高いです。

そして医療技術が進んでいますので、最先端の看護スキルを身につけることができます。

アメリカの看護師になるための道のりは決して平たんなものではありませんが、その難関をくぐり抜ける価値があるほどたくさんのメリットがあります。

3-2.カナダで国際看護師として働く場合

カナダ国旗

カナダでは看護師免許登録の基準が州により異なる為、まず、どの州で看護師免許を登録し、働きたいかを決め、
必要な書類をそろえて各州の看護等に申請し、看護師試験の受験および一定期間の実習をおこないます。

主に次の条件が資格取得の必須になります。

・母国で看護師教育を受けていること
・母国で看護資格があること
・過去5年間で、看護師として1,125時間の就労経験があること
・規定の英語力があること(IELTSまたはCELBANのスコア)
※詳細は州によって異なりますが、TOEFLで79から93程度、IELTSで6.0から6.5程度が必要と言われています。
・健康であること
・犯罪歴がないこと
・RN試験(CRNE)に合格すること
・カナダでの250時間の実習経験を持っていること(BC州、AB州のみ)

なかでも、ケベック州で看護師として働きたい場合には、フランス語の習得が必須となっています。

日本で正看護師の国家資格を持っていない場合は、一定の英語力を持っていれば、現地の大学に入学して看護師資格を取得することになります。

カナダでは看護師の年収は650万円~750万円で日本よりも高くなっています。

カナダは移住民の受け入れが積極的で、看護師になることで永住権の取得が優遇されます。

時間管理・スケジュール管理が徹底されており、残業する文化がなく、
長期休暇の取得も可能なのでプライベートタイムを大切にしながら働きたいと思っている人には最高の環境です。

また看護師の社会的信頼が高く、看護師自身の判断で行える仕事の範囲が広い為、
医師に対して患者ケアに関連する自分の意見や考えを積極的に言える職場環境になっています。

3-3.オーストラリアで国際看護師として働く場合

オーストラリア

オーストラリアでは、看護師になるための国家試験などはなく、オーストラリアの看護協会へ看護師として登録することが必要となります。

登録するには「英語力」「看護資格に値する能力、学位」についての規定をパスしなければなりません。

英語力は基本的にIELTS7.0以上、OETであればA,B判定をクリアすることが必須条件となります。

「看護資格に値する能力、学位」については、日本の4年制大学で看護を学び、
正看護師資格を保持している場合はオーストラリアの看護学校に通う必要がなく、
短期の研修プログラムを受講することでの看護師資格を取得することができます。

最終学歴が看護専門学校、医療短大で看護師資格を保持している場合は
看護学コンバージョン・コース(1~2年間)を修学することが必要になります。

給料は年収500万円ほどなので、日本とほぼ同水準となっていますが、日本より教育が充実している、
長期休暇が保障されており日本に長期で帰ることができるなどのメリットがあります。

そしてオーストラリアは他国に比べ看護師資格を取りやすいということもあり、
国際看護師を目指す人に人気の国となっています。

3-4.イギリスで国際看護師として働く場合

イギリス国旗

イギリスでは試験がなく現地の看護学校で看護知識を学び、養成課程を修了することで看護師になることができます。

また、日本の看護師免許を所有して、 IELTS 7.0(全てのセクションで平均7.0以上が必要)の条件を満たせば、
現地で20日間の講習を受けるだけで英国正看護師免許を取得できます。
しかし日本人が現地で看護師免許の交付だけ受けても採用してくれる医療機関が少なく、
就職難に陥ってしまうので免許取得後に、現地の大学へ編入してイギリスの看護事情を勉強して実績を作るか、
現地での人脈やコネクションを活かして就職する方が多いようです。

平均年収は300万円〜500万円で日本の看護師より同程度かやや少なめになりますが、その分休日が多く
、大型連休もあるので、プライベートや観光、旅行などが楽しめるゆとりのある環境で、定期的に日本に帰ってくる事もできます。

4.日本に戻ってきたときのメリット

4-1.海外水準の医療現場を経験できる

海外では日本では行われていない移植手術やまだ行われていない最先端医療に触れる機会がたくさんあります。

また国によって医療体制や看護師の働き方に違いがあり、看護師の行える医療行為が日本に比べ広範囲に及びます。

こういった経験から、多くの知識や知恵を得ることができ、看護師としての視野が広まります。

オペ室

4-2.日本の医療を客観的に見ることができる

海外看護師として就労を経験することで日本の医療を客観的に見ることができます。

医療技術についてはもちろんですが労働環境の違い(給料や労働時間・休日、生活保障など)を
実際に経験することで日本の制度や医療の善し悪しを客観的に判断できるようになります。

4-3.看護師や医師、様々な職業が対等な立場

日本の医療界では医師の立場が一番高く、看護師は医師の助手的な役割となっています。

しかし海外では医師や看護師、その他の職業も対等な立場であり、各々の意見を出し合うのが一般的です。

また日本では医師の指示のもとで看護師が医療行為を行いますが、アメリカでは上級看護師になれば、
看護師が聴診器を下げていることもあります。

海外では同じ看護師でも地位が様々ありとてもやりがいを感じられるでしょう。

対等な立場

4-4.海外では「看護職」に専念できる環境がある

日本では看護の仕事以外にも、雑用やカルテの整理などの様々な業務を看護師が行います。

一方、海外の病院では、そういった仕事は看護助手が全て行います。

看護師は仕事に集中でき、スキルアップが見込めます。

5.日本に戻って来たときのデメリット

5-1.やりがいが感じにくい

看護師の職業的地位が高いところで働いていた場合、日本の看護師にやりがいを感じにくくなるということがあげられます。

日本では医師の指示に従って業務を進めるという考え方が一般的です。

海外で医師と看護師が対等な立場で働いていた経験をしていると、日本での仕事にやりがいを感じにくくなったり、
不満や物足りなさを感じてしまうことがあります。

これは、特にアメリカやオーストラリアのような環境で勤務していた人が感じやすい傾向にあります。

やりがいを感じなくて悩む看護師

5-2.現地の看護師資格取得が高額

海外看護師として働くためには現地の看護師資格が必要です。

看護師資格を取得するために通う現地の大学の学費や生活費など高額な費用が必要になります。

報酬

最後に

海外で看護師資格を取得するのか、途上国でボランティアをしたいのか、先進国で最先端の医療を学びたいのか、
自分の語学力はどの程度なのか、働く期間はどれくらいなのかなど、いくつもある選択肢の中から自分に合った国と働き方を見つけることが大切です。

海外で看護師として働くには大きな壁があることは確かですし、メリットもデメリットもあります。

ただ、貴重な経験を積めるので興味があれば挑戦してみる価値はあるでしょう。

世界地図